母が詰めた入院セットを持って、夫と母と私の3人で病棟に案内されました。
4階だったかな?と思いますが、あまりよく思い出せません。
荷物を預けて(危険物はないかチェック)、貴金属を外して(危ないから?)。
クロックスにつけていたピンバッジも外すように言われました。
そして手用の金属探知機とボディチェック。
空港?と思っていたら、2人はいつの間にか帰宅していました。
スマホが持ち込めなかったのが、とにかく不安で仕方なかったことだけは覚えています。
そして連れて行かれた部屋は、とても異質な空間でした。
個室なのですが、中から鍵が閉められない仕様になっていました。
窓は上の方に小さいのがあって、外を覗くことは不可能。
奥にベッドがあって、透明な壁を挟んでトイレがありました。
プライバシーの空間のはずのトイレが、まったく遮蔽されていないのです。
天井には監視カメラがついていて、消灯した後にトイレのエリアに入ると自動点灯します。
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この頃は頭の半分以上が上手く働いていなかったので、ハイテクだなとズレた感想を抱いていましたが、よく考えるとまるで独房です。
この部屋は観察室と言って、入院した初日に入る部屋らしいです。
一晩中監視されながら、私は深く眠りにつきました。
妊娠後期から睡眠は細切れになり、臨月はどんな姿勢でも寝苦しくてたまらない。
産んだらノンストップ育児の始まりです。
数ヶ月ぶりに夢も見ず眠りに落ちました。
あんな異質な部屋で、不思議な安堵を抱いて眠ったのです。
自分の置かれた状況を今振り返ると、我ながらすごいところにいたなと思います。
けれど、不思議と焦燥感はありませんでした。
頭と心と身体がバラバラになっている。
部屋にあったデジタル時計を見ても、次の瞬間には何時だったか思い出せなかったです。
翌朝、朝食の時間に私は普通の個室に移ったのですが、そこはビジネスホテルサイズ。
ベッドと机と椅子まであってとても快適でした。
今度は普通の位置に窓があったけれど、10センチ程度しか開かない。
換気をするためだけの窓だということしか、当時の私の頭には入らなかったです。
のちにどこの窓も同じ設定だということを知って、脱走防止と自殺防止のためなんだと気付いたのは、随分経ってからのことでした。