2019年1月末に出産し、その2週間後に医療保護入院をした私。
右も左も分からない中で、これからどうなっていくのだろう…と、不安に思うでしょう。
普通なら。
けれどその時の私は、不安に思うという正常な感覚すら失っていたのです。
退院できたのは1ヶ月でしたが、私の診療計画書には3ヶ月と記載されていました。
これは上限だったらしく、「そこまで長くはならないよ」と、担当医に言われたのをおぼろげに覚えています。
●医療保護入院…医師の診察、家族の同意が必要。患者本人の同意は関係ない。
●措置入院…自傷他害の恐れがある。本人、家族の同意なく、都道府県知事が入院を決定できる。
●任意入院…本人の同意がある。
●応急入院…とにかく緊急を要する場合。72時間の制限あり。
厚生労働省
厚生労働省による法律に基づく入院形態をざっくり要約すると上記のとおりです。
医療保護入院は患者の同意は必要ないとなってますが、私は自ら入院を希望しました。
任意入院にならなかったのは、入院治療をせずに退院させないようにするためだったのかなと思います。
任意だと患者自らが退院したいと申請したら、72時間しか留めて置けないからです。
実質、治療が途中でも患者の意思で退院できてしまう。
それはとても大きなリスクだと思います。
では、入院1ヶ月は長いのか短いのかと問われれば、答えは「分からない」です。
私より長い入院をされていた方もいますし、私より後に入ってきて数日いただけで退院された方もいらっしゃいました。
あれは…なんだったんでしょうね?意味があったのかなと今でも不思議に思います。
誰がどんな理由で入院しているか。基本的に個人情報になるので、オープンに語るのはNG。
名前は病室のネームプレートやマイコップ(名前記入必須 )で把握できるので、初歩的なコミュニケーションは取れます。
とは言ってもおしゃべり好きな人はいるもので、〇〇さんはこうで、〇〇さんはああで…と、ネットワークを持つ人が数人います。
そしてもれなく、その方達は常連さんなのです。
入院したての私が看護師さんから教わったのは、病室の場所と食堂の場所、ナースステーションの場所と、起床・消灯時間に食事の時間のみ。
あとは他の患者さんから教えてもらいましょうというシステムでした。
これが一般的なのかどうかは分かりませんが、つまり他者とのコミュニケーションを自分から取りに行こうね、という治療の一環だったのだと思います。
というのも、主治医と面談したいと思ったら、自分で先生を捕まえてアポイントを取らなければならなかったのです。これにはちょっと驚きました。
朝の申し送りには医師、看護師が勢揃いします。
出勤したての主治医を待ち伏せする仕方を、私は常連さんに教わりました。
そのほかにもレクリエーションの種類や参加の仕方、入浴、個室シャワーの予約の仕方、外出・外泊申請の仕方など、常連さんに教わったことは数知れず。
常連さんのおかげでさまざまなことを知れましたが、1番知りたかったことは訊けませんでした。
「あなたはどうして、また入院してしまったの?」
私なんかが想像もできない深淵があるのでしょう。
けれど、そんな疑問を持てるような思考ができるまでには、半月ほどの時間がかかりました。
あの時優しくしてくれた常連さんたちは、今どうしているでしょうか。
元気でねと別れましたが、元気でいるでしょうか。